てろんとしたワンピースにカーディガンで。

ライブはピアノとチェロと尺八のトリオ。
居心地のよい会場にて、爽やかでスピード感のある演奏を楽しんできました。
このトリオのチェリスト、古川さんがチェロを弾いている姿が好きで、尺八やピアノも見ようと思うのに、ずっとチェロを見てしまった。何かを想起させるんだなと思って考えてみると、チェリストとチェロの関係が、文楽人形遣い文楽人形の関係と似て見えるよう。単に人形を遣っている、楽器を弾いているというよりも、演技している人形や音を出している楽器を非常に冷静かつ愛おしく「守っている」感じがする。それで音にも私好みのドラマができる。
古川さんらしいのは、チェロを生きもののように全身で抱きこみながら、一方でとてもラフで、無造作なところ。日本人に萌える時、私は自分が日本人である心地よさをもっとも強く感じる。古川さんが疲れてくるとほんの少しだけ弓を持つ手首が重そうになって、それがまた呼吸をととのえて態勢をたてなおす瞬間、チェロが再び生き生きと元気を取り戻したように見えるのも愛おしい。ときめくから、もっと尺八の藤原さんと仲良くしてるところを見せてくれたらいい。
ビルボードライブ大阪は西梅田にあるシックなライブハウスで、料理やお酒のメニューも豊富なところ。
開演の1時間ほど前に席取りに入り、そのままご飯やお酒をたのむ。夜でも気温の下がらない暑い日で、一緒に行った同僚や知人と4人で一つのテーブルにつき、飲み物がくるのが待ちきれず、まだ2人分しか来てないけどエア乾杯して「飲みたかったよう、会いたかったよう」(久しぶりに会う人々なので)と抱き合わんばかりに祝福しあいつつぐびぐびと飲む。
このトリオのライブは尺八をやっている同僚が誘ってくれるので喜んで行くのですが、尺八界はせまいらしく、大阪あたりでお箏や三味線、唄などやっている人々や尺八を作っている人々(竹管師)とのつながりがあって、行くとたいてい同僚の知り合いが何人かいる。
カウンター席は1人客やカップルが多く、テーブル席は女性同士か、年配のご夫婦で来ている方が多い。皆さんたいへん楽しい方で、ライブ前後におしゃべりするのがいつも面白く、この楽しみのために彼らのライブに行くようなところがあります。若手の某尺八演奏家が最近レーシックの手術をしたのに、めがねを外すのが恥ずかしくて伊達めがねをしていて「それはどーなの」という噂話など、話題の尽きることがありません。
ただ、帰りは京都まで遠い…。23時をとうに回っていても(回っているからこそ?)阪急電車は座れないくらい満員で、ぼけーっと立ちながらいつまでたっても京都に着かないような気がしてきます。まだ茨木か…まだ長岡天神か…と。河原町からまたえっちらおっちら鴨川渡って京阪に乗り換え。


曲目は彼らオリジナルの曲が中心で、やっぱりオリジナル曲が一番合ってるなあと思う。爽やかでノスタルジックな曲や、複雑な音をスタイリッシュに仕上げた曲。ただ途中でピアノの妹尾さんがクラシックを弾いてくれて、ここでラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を聞くとは思わなかったので得した気分になりました。2楽章と3楽章のピアノがメインの箇所を繋ぎ合わせ、フルートのパートを尺八が吹き、弦楽器パートをチェロがアレンジ。軽いお遊びなのだけどなまのピアノ音で一気に里心がついて、古典派やロマン派のクラシックが恋しくなってしまいました。そろそろ濃厚なクラシックの演奏会にも行こう。