塚本邦雄ウィーク

帰りにそうげんカフェ。出されたスープがおいしくて、胸があたたまる。携帯を見たら着信があり、一人でひっそりとやり終えてそれきりだと思っていた研究に、大学から証書と記念品がもらえるという連絡。そういう対象に入っているとすら知らなかったからびっくりだ、何か悪い知らせかと緊張した。なんとなく、これはどういう現象なのか?としばらく考え、でもとりあえず携帯をしまってから一人祝杯(スープで)。


塚本邦雄十二神将変』。ミステリおもしろいねー。おもしろかったー。
華やかな(?)登場人物が数多出てくるのだけど、例えば飾磨一家のそれぞれ個性的な人物の中で、大仏似の快活な美青年とか釈迦如来像似の理知派美少女とか、昔の神童で今も天才かつインドに秘密の恋人がいる美中年とかをさしおいて、作者が誰を一番ひいきしているかといえば、49才つかみどころのない美壮年・飾磨天道だというところ。
源氏物語』で光源氏が壮年になってもやはり絶世の美壮年として描かれるようなもので、物語をつらぬく強固な美意識や該博な知識は一朝一夕につくられたものではない。コシのある筆で書かれたような文章で連綿と続く長編ミステリに、クラクラとめまい。
物語の中に茶事や食事の仔細を必ず入れてしまうやり方および文体そのものに、アジア的というか日本古典全集から続く型の存在をはっきりと感じる。作者の塚本邦雄歌人でもあります。

十二神将変 (河出文庫)