願望

ばたばたする合間に藤沢周平の未刊行初期短編集を。読み切りの短編が15も入っていて、人生のドラマチックな場面をいろいろ切り取ってあるのだけど、どれも女がいじらしく男が哀れ(男はいじらしく書かれない)でちょっと飽きます。作家デビュー前後の余裕のなさのせいか、読者をドラマに溺れさせるのが第一義になっていて、透徹した視点やユーモアが足りないように思う。
ところで、ふと浮かんだ、藤沢周平が時代小説でつちかったこの高スペックな筆でもってクラシックねたを書いてくれたらすんごい良かったのでは!という思いつきに酔いしれました。
シューマン夫妻とブラームスの幸福なのか不毛なのかわからない三角関係生活とか、合うよ、きっと。ああ!藤沢周平の暗鬱とユーモアが!惜しい!(ごめんなさい周平先生…!)

未刊行初期短篇 無用の隠密 (文春文庫)