ショパン節

10月生まれの人がたくさん。私もそうなのですが、みんなおめでとう、おめでとう!
面白いこともあれば嫌なこともある。そんな“いつも通り”の数日を過ごしてしみじみするうちに、昨日から急にショパンが聞きたくなりました。
いいことがほんとに何にもないなと思うような時、自分のするべきこと・できること・やりたいことを原始的なレベルまでさかのぼっていくつも書き出し、大事だと思う順番をつけていく。すると何かは残る。そのおかげで、よくも悪くも私はたぶん生まれてこのかた絶望というものをしたことがない。
そんなふうにして、私はショパンが亡くなった年齢に少しずつ近づいていきます。どんな人だったか本当の日常の姿は大昔の霧の中ですが、ある面では憂鬱でひどく気難しくて、絶望もあったのでしょうか。心の中ではとても若く綺麗なものを夢見続けていて…。けれど近日中に演奏会に行く予定もなく、こんな時こそ宝石や小石や岩や砂が山のように積まれたweb蓬莱山をかきわけかきわけ…。



本日のショパン
12の練習曲のラスト、12曲目、通称「大洋」。ピアノの粒が岩に砕ける波のようだよ。
有名な曲だけにYouTubeにも数人の名ピアニストの演奏がアップされていて、弾いている映像付きのものを貼ろうと思ったんですが。
映像なしで、ヴラジーミル・ホロヴィッツ氏の対重戦車速射砲的演奏に迎撃されてしまいましょう。重い揺れが大波のゆったりしたうねりや波頭のきらめきまで表し、繊細なタッチでロマンティシズムを、そして波の向こうの死に惹き寄せられる貴族的な大艦隊を浮かびあがらせます。



12の練習曲集、11曲目、通称「木枯らし」。優しい前触れから一気に鍵盤を両手が駆け巡る激しい曲調へ。こちらもやはり映像なしの音のみで、ジョルジュ・シフラ氏の猫科の猛獣がゴロニャーゴロニャー暴れ狂いまわるがごとき演奏を。



映像付きで音も綺麗なのは、ヴァレンティーナ・リシッツァ姉さんのものを。上の2人の演奏を聞いた後だと、同じ曲でもどことなく均質的かつ、死や破壊への憧れを感じさせないという意で驚くほどに破綻がありません。この美しさは眺めて楽しむつるんとした肌のお人形のようでもあり。何体も並べてみたいです。

「大洋のエチュード

「木枯らしのエチュード


自己満足にいっぱい貼っちゃったわ。リシッツァ姉さんのピアノはベーゼンドルファー