妖怪に狙われやすい日本人の身体部位

『妖怪文化研究最前線』は小松和彦編集の論文アンソロジーで、こんな目次。
http://www.serica.co.jp/291.htm
内容は大きく4部に分かれており、その構成からも、とても読みやすく作られています。現代のサブカルチャーにとりこまれた妖怪を論じるⅠ部、主に近世の文献を分析して妖怪が伝播していく歴史を追ったⅡ部、神道や仏教関連の文献も含む中世の説話集のなかに様々な妖怪の誕生を見出したⅢ部、文献ではなく「伝承」のデータベースを使って妖怪と日本人の社会・身体・語彙を広く考察したⅣ部。

柳田邦男の民俗学から小松和彦の妖怪学、さらに…という流れの中で、「妖怪」を考える研究者が少しずつ増えている現状、この妖怪文化叢書は今後シリーズ化を目指しているとのことで、楽しみにチェックしていきたいと思います。

妖怪文化研究の最前線 (妖怪文化叢書)


なお、上で紹介した「妖怪・怪異に狙われやすい日本人の身体部位」であげられている各部位について、面白かったので勝手ながら私見で抜粋・要約してみましたよ。よろしければ。
○足:損傷すると妖怪のせいになる(例、ふくらはぎの傷はカマイタチのせい)
○目:対の片方を壊されることで当人が異形化(一つ目小僧)
○鼻:呼吸と同時に魂や悪霊が出入りする危険な穴(天狗は鼻の穴から犬神を出入りさせる)
○口:鼻と違って自力で閉じて悪霊退散、口=女性器の連想という恐怖の心理史も(口裂け女
○背中:穴じゃないけど「自分で見られない」恐怖心理から妖怪の侵入経路に、逆に妖怪は背中を使わない(産女は赤ん坊を背負わない)
○脇の下:腫物などできやすい=鱗が生えたり狢が脇の下に入って添い寝したり(添い寝はいやだ…)
○肩:乗られる、とにかく乗られる(狸などが乗り移る)


…鼻や肩のように、直接的な身体感覚が恐怖と結びつく部位もあれば、口や背中のように連想や比喩を介して結びつく部位もあるのですねー。