古書店の木箱から抜き出したその単行本には、ビニールカバーがかけられていた。 購入者や書店がかけたものではなくて、新刊時から付いていたのだろう、昔ながらの、厚手のビニール・ブック・カバー。少しばかり縮み、黄ばんでいる。中身の本がぎゅうっときつ…
午後から思いっきり嵐。 分厚いくせに去年ひびが入ってしまった古いガラスへ、割れたら困る、がんばれ、と心の中で掛け声をかける。 夜は静か。道路をゆく車輪の風圧で、舞った枯れ葉が、かさりと音を立てる。 通り過ぎてゆく、いちどとて無粋なブレーキの音…
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