お天気

某日
夜になってざっと降ったけれど、おおむね曇りで留まった一日。蒸した。蒸された。朝から扇風機で机に向かった。降りそうで降らない、もしくはちょっと降ってすぐやむような今日みたいな日には、能の謡を流す。カセットテープに録音したもの。
謡の詞章はあえて聞き取らないようにする。どうせ、机であれこれしている間は、ほとんど聞いてない…。
なにがどうというのか分からないが、時折湿気が重くて倒れこんだ時、低くまとわりついてくるような声は不快ではない。


某日
どこまでも続いていきそうな時間の浪費をやんわりと留めたのは耳に届いたかすかな音だった。部屋を満たしていた光は、いつしかどんよりと黒くくすんでいる。ちりん、と響いた。
音の方向へ、顔を向けた。
風の動きは、流れのない水のように重く鈍い。