おおブレネリ

日が隠れると庭が眠って、今日1日の疲れを休めるんだと思ってほっとする。

家に帰ると隣の戸から隣人が出てきたところだった。
60代後半くらいの小柄な女性で、片手と細い腰とで水のなみなみ入った桶を支え、片手で戸をしめている。愛想いい「お帰りなさい」に対して私が「ただいま」「ただいまです」等と親しげに応じるのもしつれいな気がして、笑って「はい」とだけこたえるのだけど、20時に顔を合わせるのはめずらしい。隣人は普段ものすごく朝型なのだ。そして私もなんだか不規則な時間に仕事に出たり買い物袋をさげて帰ってきたりする妙な人間だ。
隣人が桶の中身を溝に空けると、もったりと泡立つ水が灯りに照らされながら流れていく。