新・夢十夜

勤務先Kはもう冬休みで職場も閉まっているのだけど、閉まる前にあの資料を見ておけばよかった、と今さら思う段取りの悪さ。かと思えば勤務先Rでは、必要な人員がインフルエンザで急遽離脱。よく考えればどちらもたいしたことではないのだけど、ちらりと心が冷えます。とりあえず、「畜生はドイツ語でシャイセ!」(『ノケモノと花嫁』)ととなえておきます。笑。


新・夢十夜 (創元推理文庫)

芦原すなお『新・夢十夜』(創元推理文庫)。
別々に独立した10の短編だと思って読み始めたものの、夢に妙に共通項が多いので、同一人物が見た10の悪夢と考えたほうが面白いか。最初の「時の小鳥」や「水車」あたりは、入れ子構造の奇妙な夢をモチーフにしつつ夢以外の部分にも重点がおかれているな〜「夢十夜」というより普通の短編だな〜と思って読みましたが、全てがまるっきり夢だとすると、夢ではないと思っていたところも夢になり、足元が崩れて悪夢感が倍増ドン。しかもどの話も、箱を閉じるように結末がぴたりと閉じているので、悪夢感がさらに倍。読み終わったところで、ああ面白かったなあと深い吐息が出ました。ぐねぐねした話が閉じる、各編の結末部を読むのが暗い喜びでした。
解説で心理アナリストによるフロイト派の夢解説がついていますが、これはなくてもいい読みものだな…。私はこの小説のような夢はほとんど見ないので、興味深くは思いました。
ごく平凡な昭和後半の風景が中心になっているところ、漱石の魅力的なイマジネーションとはタイプが違います。「こんな夢を見た。」という枠組みもありませんし。漱石の『夢十夜』を求める場合は、塚本邦雄の変な短編をどれか読むといいような気がする。ちょっと違うかな。『新・夢十夜』は家庭の男女の変てこに噛み合ない会話が多くて、そこは星新一ふうの面白さがあります。